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高松簡易裁判所 昭和53年(ろ)22号 判決 1979年2月23日

主文

被告人を罰金六万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金二、〇〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、高松市上之町二丁目八番三四号に所在し、香川県知事から許可を受け産業廃棄物である建設廃材の収集、運搬、処分の業を営む香川県廃棄物処理協同組合の代表理事であるが、香川県知事の許可を受けず、かつ、法定の除外事由もないのに、右組合の業務に関し別紙一覧表(一)(二)(三)記載のとおり、昭和五〇年五月ころから同五一年八月一七日ころまでの間、四六回にわたり、業として前記許可を受けた建設廃材以外の産業廃棄物である汚でいなどを、善通寺市弘田町二六の五関西化学工業株式会社ほか二か所で収集し、これをその都度同所から香川郡香川町大字浅野字中荒二、一一六の一の被告人所有地ほか一か所まで自動車で運搬し、もつて許可を受けないで産業廃棄物の処理業を営んだものである。

(証拠の標目)(省略)

(弁護人の主張に対する判断)

弁護人は、本件公訴事実につき

一  四国工芸株式会社の廃棄物のうち廃油は、同社において、小型家具に塗料を吹きつけた後、製品を水洗いし、それから落ちた塗料かすであつて、通常の認識からすれば、これを廃油該当物と解することはできず、右廃油収集、運搬の訴因については、事実の錯誤があるから罪とならない。

二  その他の各依頼者より収集、運搬した廃棄物である木くず、燃えがら、動植物性残渣、汚でいは、被告人及び被告人の子所有の田畑に肥料ないし土地改良剤として施用し、なお、木くずの一部は、養豚場の床敷として他人に与えたものであつて、これらの収集、運搬は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下単に法という)一四条一項ただし書に該当するものであるから違法行為ではない。

三  再生利用目的物に混入している再生利用に適しない燃えがら、汚でい等については、混入物の除去が困難であるときは、目的物から見た再生利用の目的に反しない限り、これを除去せず、一体として収集、運搬、処分しても、社会通念上許容され、何ら法に違反するものではない。

と主張するので、以下これらについて考察する。

一  本件廃油が、右主張の如き塗料かすであつて、これが法二条三項に規定された廃油に該当することは、昭和五一年一〇月一九日付香川県環境総務課長の「捜査関係事項照会について(回答)」に明示されているところで、香川県廃棄物処理協同組合代表理事であり、県内廃棄物処理業者の連絡機関たる香川県産業廃棄物処理業者連絡協議会長でもある被告人にその認識が困難であつたとは考えられないが、仮に被告人において、それが廃油に該当することを知らなかつたとしても、右塗料かすが被告人の許可を受けている建設廃材以外の産業廃棄物であること、及び、これの収集、運搬が無許可営業になることの認識を有していたことは、被告人の検察官に対する昭和五二年九月二一日付供述調書によつても明白であるので、右主張は法律の錯誤というべく、被告人の故意を阻却するものではない。

二  証人二宮清憲の当公判廷における供述並びに同人、奈良岡美津男、鈴木一郎及び松本直行の検察官に対する各供述調書によると、本件廃棄物のうち、日本酪農協同株式会社香川工場の廃棄物である汚でい、動植物性残渣については、被告人がその一部を肥料として自己の畑に試用したこと、しかし、肥料化するについては、製造工程、事業化等の問題もあつて実現せず、右試用したほかの廃棄物は、すべて運搬先の被告人所有地外一か所の深田圃あるいは周辺の穴の中に移し込み、または焼却して処分したこと、また、四国工芸株式会社の廃棄物のうち木くずについては、鈴木一郎が被告人所有地に捨ててある木くずに目を着け、被告人に請うて養豚の床敷として必要量をもらい受けたが、そのほかは焼却炉で焼いていたこと等が認められる。

法一四条一項ただし書の規定は、廃棄物それ自体が、古紙、くず鉄(古銅等金属を含む)、空びん類、古繊維等の如く、もつぱら再生利用されるような性質のものである場合に、それらのものを取扱う業者が許可の対象とならないという趣旨に解すべきところ、前記各証拠によつて認められる本件廃棄物の態様及び収集、運搬、処分のいきさつ等からして、右趣旨に該当し、もつぱら再生利用されたものと認めることはできない。

三  右主張の各廃棄物が法一四条一項ただし書に該当しない以上、これに混入した再生利用に適しないものについても論をまたないところである。

以上により、弁護人の主張はいずれも採用できない。

(法令の適用)

被告人の判示所為は、昭和五一年法律六八号(廃棄物の処理及び清掃に関する法律及び廃棄物処理施設整備緊急措置法の一部を改正する法律)附則二条二項により、同法による改正前の廃棄物の処理及び清掃に関する法律一四条一項、二五条、二九条、罰金等臨時措置法四条に該当するので、所定刑中罰金刑を選択し、所定の罰金額の範囲内で、被告人を罰金六万円に処し、右罰金を完納することができないときは、刑法一八条により、金二、〇〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、訴訟費用については、刑事訴訟法一八一条一項本文を適用して全部これを被告人に負担させることとし、主文のとおり判決する。

別紙(一)

関西化学工業株式会社関係一覧表

<省略>

別紙(二)

四国工芸株式会社関係一覧表

<省略>

別紙(三)

日本酪農協同株式会社香川工場関係一覧表

<省略>

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